メタ探求型学習の基本コンセプト

学び方を学べるワークショップ設計を多種多様に設計することで、明らかになった「高次学習」のメカニズムと、その実践方法

メタ探求型学習の基本コンセプト

教えられた以上を学べる設計

私たち toiee Labは、写真撮影技術、動画撮影・編集技術から、高度なプレゼン資料作り、意思決定、マーケティング分析、文章作成、ラーニング・ファシリテーションなど、『多種多様なワークショップ』 を設計してきました。

ワークショップを設計する際に、1番力を入れたものは、「教えられた以上を、自らで学べるようになる」 ことです。

例えば、3時間の写真ワークショップを受けることで、格段に撮影する写真が見違えります。しかし、それだけではありません。

ワークショップ中に体験した「学び方」「姿勢」「取り組み方」を使えば、自分で書籍を買ってきたり、インターネット上で見つけたプロの写真から、さらに多くを学び、継続することで、ワークショップで学んだ以上のレベルになれるように設計しています。

2017年に開催した写真ワークショップの様子

探求するように学び、探求方法を探求する

ワークショップの設計を一言で言い表すと、

  • 目の前の課題を「探求するように、学習」する
  • 同時に、「探求方法を、探求」する

です。

ワークショップを、このような構造で設計することによって、「学び方を学び」、ワークショップ(授業)が終わった後も、継続して学び、「教えられていないこと」を学べます。

さらに、学び続ける中で、「学ぶ力そのもの」が上がっていきます。

上記の構造は、探求が入れ子構造になっている、あるいは「一つ上の探求」があるため、「メタ」探求型学習と呼称するようにしました。

探求するとは何か?

私たちは、以下の4つは「フィードバックによるシステム制御(多段の)」として定義しています。

  • 探求する
  • 仮説検証
  • 科学が採用しているアプローチ
  • 学習すること
  • 習得すること
  • スキルを高めること

つまり「探求」するように学ぶとは、本来は「学ぶことを、別の呼び方をしている」と考えています。学習をミクロレベルに考えると、時には「繰り返しによる記憶」をしているだけの場合もあります。しかし、少し引いてみれば、そこには「探求」の余地があります。

とにかく、重要なことは「探求」とは、仮説検証であり、学習と呼ばれる仕組みであると言うことです。

フィードバック制御システム

私たちは、人間の学習を「フィードバックによるシステム制御(と、その応用)」と捉えています。

フィードバックとは、自分がアウトプットしたものが、自分のインプットとして帰ってくることです。そのインプット情報を使って、次の行動を調整するのが「フィードバックによるシステム制御」です。

エアコンの場合、アウトプットは「冷気(あるいは暖気)」です。そのアウトプットの結果、室内温度が変化します。その変化(あるいは温度)をインプットとして受け取ります。

つまり、エアコンの場合「目標温度」と「現在の温度」と「その差」というインプットを使い、次の行動(冷気をもっと出すのか、止めるのか、風量の調整)を決定しています。

このようなシステムの高度なバージョンが「学習」として捉えています。人工知能などの分野では、強化学習として知られています。

toiee Lab 学習理論エッセンシャル2021コース資料から引用

toiee Lab では、フィードバックによるシステム制御部分の中で何をやっているかは、「時にはニューラルネットワークのようなものを使う」「時には、ベイジアンネットワークの調整のようなものを使う」「時には進化の過程で手に入れたヒューリスティクスなアルゴリズムを使う」が、結局のところ、その部分は、深くは問わないこととしています。

制御部分が「何をやっているか?」は、現代科学では解明しきれていないため、あえて大雑把に捉え「何を実現しているか?」から、有効な教育プロセスを設計することとしました。

フィードバックシステムとして、学習を捉えることで(これ自体は、システム論の考え方に近い)、「探求する」ためのプロセスを設計することができます。

フィードバックシステムとして、学習をとらえるイメージ

私たちの脳は、「ロジックを、そのまま飲み込むようにはできていない」です。私たちの脳は、まず「空気の振動」を鼓膜で電気信号、神経信号に変換します。それらのパターンを過去の経験から、特定の言葉として捉えます。それらの言葉の連なり、強弱、間などの情報も加味して、あるいは、相手に関する情報も加味して、「意味」を特定します。

このような処理を通じるため、必ず伝達される情報には「学習者の解釈」が挟まってしまいます。結果、コンピュータのように、アルゴリズムを渡せば、そのアリゴリズムを丸呑みするようなことができません。

では、人間、あるいは生物は、どうやって学習しているでしょうか?ここでは、神経状の情報処理には着目せず、もっと大雑把に「システム」として捉えてみます。

例えば、

  • 「AはBである。なぜならば、C」

を教えられたとします。これを、そのまま暗記し、活用するだけで良い場合もあります。しかし、これを本当に理解するには、「本当に、そうなのか?」「どういうことなのか?」「もし、こんなことをしたら?」と考え、検証し確かめることで理解します。

toiee Lab 学習理論エッセンシャル2021コース資料から引用

検証の方法は学習対象によって様々です。実際に行動を伴う場合もあれば、いろんな人に意見を聞くこともあれば、思考実験や、論理検証かもしれません。

どちらにせよ、「AならばB、なぜならばCだから」を、検証することを通じて、自分のメンタルモデル、過去の知識のネットワークに組み入れます。

これが学習であり、探求であり、仮説検証です。

メタな探求

では、この仮説検証の方法は、「どうするのが、良いでしょうか」。仮説検証の方法自体を、検証することが必要です。つまり、いろんな場面で、特定の仮説検証方法を試してみて、より良い方法を探すことが必要です。

例えば、「Aならば」のAを自分は理解できているのか?提示した人と同じAだと捉えているのか、こういう小さなレベルもチェックするように学ぶべきなんじゃないか?と考えたら、そのような学習の仕方が、効果的か検証すれば良いです。

あるいは、先人の良い学び方などを知って、取り入れるなどもできるでしょう。もちろん、取り入れるプロセスも「メタ探求」になるでしょう。

実は、そんなに難しくない

理論的な背景をしっかりと理解しようと思うと、難しいです。しかし、実際の行動はシンプルです。

  • FILM2シートを使う(あるいは、それと同じようなことをする)
  • 振り返りをする
  • 振り返りのセットを振り返る
  • 外部の知識、先人の知恵、抽象度が高めの学習のガイドをFILMシートに組み入れる

これらを継続的に行えば、メタ探求型学習は、体感として理解できます。

FILMシート

このカテゴリでは、メタ探求型学習のコンセプトにつながる、様々なトピックを紹介します。

是非、日々のあなたの成長に。あるいは、教育プロセスの設計に役立てていただければ幸いです。

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